ダンスの時間 2016年

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Introduction

「離れ技」のダンスでも、「孤高の芸術」でもないダンス。生きることをやんわり楽にするダンスって、どんなダンス?子どもたちの生命力や芸術性を描いて感動を呼んだ野中真理子監督の11年ぶりの第3作がついに完成!新作のテーマは、美しい大人の女性の「ダンスのある暮らし」。

ダンサーの村田香織さんは、ひっぱりだこ。新江ノ島水族館のイルカショーの振付からはじまって、スカイツリーのすみだ水族館のスタッフにも、ちょっと不思議なダンスを用意。お客さまとのコミュニケーションを円滑にしよう、というレッスンをしています。からだを動かすと、こころはどう動く? 気持ちをあらわすにはどう動けばいい? 動物好きでナイーブなスタッフがだんだん笑顔になってゆく時間。香織さんは週に一日、老いた母の介護にも通います。日がな一日ベッドですごす母の、「できません」「だめです」の言葉をどう受けとめればいい? 母と話し、母に触れる。どうしたいのかを感じる。これだって、母と娘のデュエットダンス。

ダンスとは感じること。どんなに大変でも、生きることを肯定すること。やわらかく背筋の伸びた香織さんの日常に、わたしたちのこころとからだを楽にする、ダンスの秘密が見えてきます。

2015-07-20 | Posted in 作品紹介No Comments » 

トントンギコギコ図工の時間 2004年

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Introduction

トントントントン、ギーコギーコギコギコギコ…。
日の当たる教室の中から、にぎやかな音が聞こえてきます。
ここは、東京都品川区立第三日野小学校の図工室。
週に1回2時間ずつ、いろいろな学年の子どもがやってきます。

ある日の図工室に集まっていたのは、3年生。
子どもたちの真ん中で、バケツを抱えてニコニコしているおじさんは、図工専科のウチノ先生です。

「ジャジャーン!」とウチノ先生がバケツをあけると、机の上には古いクギがてんこ盛りになりました。
「使えるクギ、さがしてください」
錆びたり曲がったりしたクギを見て、子どもたちは「全然見つからない!」「さびてるじゃん」とブツブツ。
すると今度は、ウチノ先生がトンカチの使い方を教えてくれます。
「最初は釘を手で押さえてトントン。それから手を離してドンドン」両手に乗るくらいの角材に、先生が数本のクギを打ちこみます。
「なにか模様ができるね。やってみる?」
「はーい!」
それから子どもたちは、無我夢中でトントンドンドン。
箱とか本立てとか、何か役に立つものをつくるわけではなく、ただひたすらにクギを打つのです。

およそ1時間後、彼らの小さな手の中には、ひとりひとりの友だちとなる「クギ人間」が誕生していました…。

映画情報

基本情報

  • 時間: 99 分
  • 画面サイズ: 1.37:1
  • ディスク枚数: 1
  • 販売元: 紀伊國屋書店
  • 発売日 2005/10/22

受賞歴

  • 文化庁文化記録映画優秀賞
  • 2004年度キネマ旬報ベスト・テン 文化映像部門第3位

スタッフ

  • 監督/脚本/編集 野中真理子
  • 語り 犬山イヌコ
  • 撮影 夏海光造
  • 音響 米山靖
  • 技術 石井有生、新垣直哉、渡辺勝重、渡辺丈彦、池田昌史
  • 撮影協力 堂本昌宏、水野宏重
  • タイトルアニメーション マガリ事務所
  • 音楽コーディネイト 村田香織
  • 音楽 新谷祥子、クリストファー・ハーディー、アンディ・ベヴァン
  • 歌 江原陽子
  • レコーディングエンジニア 松田龍太
  • アートディレクション 田部良子
  • グラフィックデザイン 川上修
  • 編集技術 藤森康平、川生誠
  • プログラム編集 菅聖子
  • プログラムイラスト 森優子
  • 印刷 深雪印刷
  • タイミング 笠原征洋
  • 予告編集 鈴木真一
  • 英訳 中村博郎、ブレット・フィンリー
  • HP制作 大槻由佳里
  • 協力 東京都図画工作研究会、ポレポレタイムス社、ポレポレ東中野、ヨコシネD.I.A.、ソニーPCL、アークビデオ、crescent studio、マイシャ、コマキ楽器、スタジオデックス、ザ・ないん、イッセー尾形・ら 森田オフィス、いなほ保育園のみなさん、櫻井光政、富岡広樹、岩城浩志、穴澤秀隆、河内紀、伊勢真一、橋本こずえ、森泉、松家仁之
  • 支援 文化庁

 

この映画を作ったワケ

2001年につくった『こどもの時間』は、無認可のいなほ保育園という日本で唯一の場所の日常生活に存在する希望のドキュメンタリーでした。
今度は、日本中どこの町にもある公立小学校という、ごく普通の場所の日常生活に在る希望です。もちろん東京という地域性や、あるいは品川区という個性はあるかもしれません。それでも周辺に暮らす子どもであれば、特別な試験や特別な費用や親の特別な決心がなくても通うことのできる普通の学校です。今回わたしは、そんな普通の場所にある希望を映画にしたかったのです。

撮影の申し入れをした教育委員会の担当者は「こんな普通の学校の普通の子どもたちに普通の教師が教える普通の授業を映画にして、観てくれる人がいるんでしょうか」と心配してくれました。それでもわたしの気持ちは揺らぎませんでした。何故なら今これを撮影しなくてはならない、という切迫した思いがあったからです。

『こどもの時間』は全く予想もしなかったほど沢山の人が観てくださり、何千というご感想の言葉をいただきました。その言葉を読み、聞くことで、わたしは日本中の子どもたちが毎日どれほど時間泥棒にかけがえのない時間を奪われているかを思い知りました。時間泥棒は学歴主義をふりかざしたり、効率の重要性を説いたりしながら、強引に巧みに、子どもの自由を泥棒達のヤクニタツモノに化学変化させているのです。その事実は心に突き刺さりました。

そんな頃『こどもの時間』を観てくださった東京の図工の先生たちから「次年度(2002年度)から新学習指導要領と完全5日制が導入されることにともない、図工の時間も大幅に削られる。子どもたちが大好きな図工の時間が次第に失われていくことに危機感を持っている。図工室にも、子どもが自由に自分を表現するこどもの時間があります。近々、作品展があるので来ませんか」というお誘いをいただきました。小学生の作品展と聞いたときは、自分の由々しき小学生時代や、その頃描いていた自分のつまらない絵を想像して行く気にはなれませんでした。けれども図工の先生たちのお話が印象深く、ともかく子どもの好きな時間が減っていくことも気になって、ちょっと立ち寄ってみたのです。

東京都図画工作研究会の先生たちが年一回ひらく『図工だいすき展』その会場に入るなり衝撃を受けました。そこは子どもたちの姿はないのに、彼らの喜びのエネルギーが渦巻いていました。オリジナリティーの多様さは「ここはMOMA?」と思うほど。第三者であるわたしにも、作者が何を表現したいのかという思いが伝わってくる完成度の高さ。われを忘れて一点一点見入ってしまいました。こういう楽しい時間が、東京の普通の公立小学校や公立の養護学校にあるんだ。これをつくっているときの子どもたちはとても満たされているなあ。そう思うと彼らに会いたい気持ちでいっぱいになりました。だって彼らは特別の美術学校の生徒ではないんです。かつてのわたしともわたしの息子とも同じ、それからあの言葉を送ってくれた多くの人たちやその子どもともおそらく同じであろう公立小学校に通う普通の子どもたちなんですもの。そこに希望があるのなら見澄ましたい、そこから出発したい、とこれはもう自分の使命であるかのように決心したのです。

都心からおよそ50キロ北の町に住んでいるわたしにとって、東京の小学生は距離的にも精神的にも遠い存在で、およそクールな人たちかと思っていました。けれども足かけ2年間撮影しつづけて、彼らもまた、生きる喜びを素直に求める人たちであることがわかり、今では愛おしくてたまりません。この気持ちの変化が、わたしににとって一番の宝物です。  そしてこの映画の製作にはプロデューサーも特定の制作会社やスポンサーも制作助手もありません。誰かにおやりなさいと言われたものではなく、ひとえにわたしがこういうものをつくりたくてつくりました。そしてわたしと撮影の夏海光造さんと音響の米山靖さんの3人で知恵を出し合い、資金をやりくりして、大洋を笹船で航海するような心細さで船出しました。度重なる悪天候にも合いましたが、多くの友人知人の頼もしい応援と協力に支えられてなんとか完成、そして公開までこぎつけました。この製作過程もまた、かけがえのない宝物です。

映画のメッセージは、奇しくも大貫妙子さんが書き表してくれたとおり、かたちのないところから自分だけのかたちをつくろうと夢中になる素敵さ、そこでしか誕生しない自由という力の大きさです。そうやって夢中になっている子どもたちの背中には、何ものにも捕まらぬ勢いで飛ぶことのできる、光の羽がはえていました。そんな子どもたちが奏でるトントンでギコギコな図工の時間です。あなたの心にはどのように響くでしょうか。どうぞご感想をお寄せください。

寄せられた言葉

木切れ、紙、土、鉄、色
彼らのちいさな手が触れているもの、
それは廃材でありながら世界だ。

彼らのちいさな手が作り出すもの、
それもまた世界である。

希望に満ちた巨大な世界である。
作家 角田光代

こどもがそのままおとなになったようなひと
という形容があるけれど、それは、夢中になることを忘れないひとです。
熱中する没頭する、ひとが無心になる時の顔はなんて素敵なんだろう。
あたえられたことだけをこなす毎日なんて
今ならロボットにだってできるもん。
考える時間、楽しい時間、達成する嬉しさ。
こどもおとなもいっしょだよ。
トントンギコギコ夢中になるものありますか?
ミュージシャン 大貫妙子

友達と裏庭で遊んだり、
きょうだいで学校の話をしたり、

日常でのたわいもない体験が、
自分の時間の全てなんだなぁーって。
そんな見えにくい時間を丁寧に映し出した映像である。
アーティスト 日比野克彦

スクリーンに映る彼らの夢中なまなざしは、
生命の輝きそのものだ。
そして作品からにじんで見える空想のひとコマひとコマは、なんていとおしいのだろう。
ミナ ペルホネン・デザイナー 皆川明

天心らんまんな子供の作品は
とかくドラマティックに仕上げられるものですが、それを避けて、観る人の発見と鑑賞力を信頼した作り方―その構成と編集が好もしく思われました。
カメラもそれらの作品の質をより深くとらえています。格調の高い、そして楽しめる映画になりました。
映画監督 土本典昭

ひさしぶりに子どもたちの心の声と言葉を聞いたような気がします。
小学生の図工の時間は子どもたちにとって開放された時間空間の世界。
クギカナヅチを使って何ができるか分からない。
結局、出来上がった工作は思いもよらない形と色をもっているけれど、これはすべて作者たちの思いが込められた大切な表情物
それらのオブジェによって東京都品川区の景観が 今までにない新しいものに見えてきたことには感激しました。
社会的に危機の時代に小さなシュールレアリストたちの作品はとても輝いて見えます。
映画評論家 渡部実

 

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英語版プレスリリース(English Leaflet)はこちら

2015-07-20 | Posted in 作品紹介1 Comment » 

こどもの時間 2001年

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Introduction

「こどもの時間」に登場するこどもたちは、埼玉県にある保育園に通っている。こどもたちは0歳から6歳の友達およそ100人と、およそ30人の大人と、山羊や馬と、火や水や土とともに生きている。彼らと6年あまり向き合って、映画が出来上がった。

いなほ保育園は1981年に誕生した。最初は小さな園庭から出発し、その後、子どもたちが存分に走れる約4000坪の土地を借り、園舎を築き、今日に至っている。 冬のこどもは、大きな焚火で心と体をあたため、その火から食べ物や多くの喜びを得る。夏のこどもは、水と遊ぶ喜びで満たされる。

「人生のはじまりの時間」を見つめたキッズ・ストーリー。

映画情報

基本情報

  • 公開日: 2001 年
  • 時間: 80 分

受賞歴

  • 朝日ベストテン映画祭第6位

スタッフ

  • 監督 野中真理子
  • 語り イッセー尾形
  • 出演 いなほ保育園のみなさん
  • 撮影 夏海光造
  • 音響 米山靖
  • 制作 寺中桂子
  • 製作協力 テレビ東京
  • 製作 マザーランド

寄せられた言葉

誰もがさずかった輝かしい生命力を、最大限に披露するこども達。
その力をたくましく支えるおとな達。
それぞれの眼差しと姿勢に何度も魅せられ、考える。そのすべてが、未来的な映像です。
俳優 本木雅弘


ありがたく 拝受
パーソナリティ・随筆家 永六輔


あなたが、をこめてお作りになった映画だ、

ということが、とても良くわかります。
私は、芝居の旅がしばらく続きますが、
そうこうしているうちにも、子どもたちは、
どんどん大きくなっていくんでしょうね。
そういうことも面白いと思います。
子どもたちのものは、私も、いつ見ても大好きです。
女優・タレント 黒柳徹子


『こどもの時間』という映画の試写会の案内がきた。もうこのタイトルに嬉しくなった。
さっそく女房にいう。

「おい、これ観に行こう」
「いこう」
簡単だった。

の映画は何もしていないように見えて、実は大変なことをしているのではないだろうか。
ボク等が終戦直後に体験した「こどもの時間」がよみがえってきた。
ボク等が体験したような「こどもの時間」はもう絶滅しているかのように思っていた。
なんたって、絶滅していると思っていたニッポンカワウソが、
「いたぞォーッ!おい、いとよ、いたぜ、まったく参ったなぁ、
アハハハハ、良かったなぁ生きてたよ」
といって、しまいには涙声になる喜びというのかなぁ。
とにかく嬉しい。

こんな生活をしているこどもがいる。
そして、こんなに生きている子供を保育している大人達も絶滅していなかった。
そこに通わせる親達もいる。勇気が要るよジッサイ。
「こどもの時間」を作った野中真理子はその親の一人だった。なんとそうなのです。
このような作品をするりとくぐり抜けるように作ってしまう母親は戦後の時代にはいなかったと思う。快挙といってよい。
こういう映画を観ると、能書きばっかり言ってる自分が男として恥ずかしい。

とにかく皆さん、この映画は楽しい。子供の能力が凄い。
「いなほ保育園」を運営している大人も凄い。そして自然の風景も凄い。
あの、保育園の建物はもの凄いよ。あんなルーズな建物見たこともない。
あきれる程素晴らしい。笑っちゃうよ
皆んな観てると、ギョ―ッ!となります。ヒヤヒヤします。
でも子供は大丈夫なのです。

この映画の最後の音は、なんと昼寝中の子供のイビキなのです。
ヤッホーッ!
ミュージシャン 坂田明

2015-06-20 | Posted in 作品紹介No Comments »